日本人ことはじめ講座は、日本人らしさゆえに世界を魅了する無名の日本人を増やします。

9月27日(土)、日本の神話【外国人が語る古事記】が実施されました。

今回は20名分の座席しか用意できていなかったうえに、
お申込が重なり満員御礼となりました。まことにありがとうございます。

その様子をしっかり写真に収めるべきところ、今回は講師の話に合わせて
私(内田)がキーワードや概念を板書することに集中していため、
カメラの存在をすっかり失念しておりました・・・申し訳ございません。
というわけで、今回は写真なしのご報告です。

 

なぜ今回、和えの会で古事記をとりあげたか。

古事記は民族と国家の誕生の物語、神々の物語であり、
日本人の精神的根っこにあるもの、日本人の行動原理、日本人らしさが
示されているものだからです。

日本の伝統文化や美点を大事にしたいと考える人たちが古事記の重要性を
訴えたり、歴史家トインビーが「神話を忘れた民族は100年以内に滅びる」
と言ったりしたのはそのためです。

トインビーが「滅びる」と言ったのは、その民族が地上から消えてなくなるという意味ではなく、
「民族としての精神的な死を迎える」という意味だと私は考えています。

言い換えると「あなたが日本人であることを証明してください」と言われたときに
どうするか、という問題にかかわってくるのではないでしょうか。
日本語を上手に話すだけなら外国人だってできます。

でも日本の国の成り立ち、神々の時代の物語である古事記について
しっかり理解しているとなれば、日本人だと認められる確度は高まるはず。

敗戦によって戦前教育が否定され古事記は忘れ去られてきましたが、
戦後70年、つまり私たちに残された今後30年の意味は大きいと思います。

そこで、どうすれば日本人になじみのない古事記に関心をもってもらえるかと考えたとき
「外国人に話してもらえば面白いのではないか」と思い至ったのです。

今回の講師、エミリア・シャロンドン先生はブルガリアご出身。
高校生のときに日本に関するテレビ番組を見たのをきっかけに
強く日本に関心を持たれたそうで、比較文化の視点から日本の神話である
古事記や日本書紀の研究をなさっています。

先生が古事記の中で注目したのは、一度登場しただけであとは全く名前が出てこない、
あるいは役割がよくわからない神がいるということです。

ユング派の心理学者、河合隼雄氏の言葉を借りれば、
それは中空(真ん中がからっぽ)の存在ともいえ、
この神のおかげで相対する神々の対立が和らいでいるのです。
先生は、この中空の存在を想定すると
日本の社会の成り立ちがよく見えるとおっしゃいます。

その代表格が天皇です。

象徴としての天皇が日本の真ん中に君臨することで、
さまざまな対立が吸収され、いつの間にやらものごとが丸く収まっている。

逆にいえば、過去天皇が支配権をもとうとすると、
かえって社会が混乱したことは歴史が証明しています。

外国人のシャロンドン先生からみると、象徴的存在だからこそ天皇の意味は大きく、
それゆえ社会の安定につながっているということでした。

また殺し合いをして決着をつける北欧神話と違い、古事記では神々が
徹底的な対立を避けるために、どちらかがうまく退いて妥協的解決を図っています。
これは日本人特有の曖昧な表現や、あえて白黒つけない態度によって争いを避け、
和を好む性質を表わしているというご指摘もありました。

さらに女神イザナミから男神イザナギに声をかけるとヒルコ(手足のない子供)が生まれ、
逆にイザナギからイザナミに求婚すると今度はうまくいったという話は、
場合によっては男性優位にものごとを進める意義を示しています。

実際、先生からみるとこの神話のとおり、日本は性差に応じた
男女の役割が比較的うまく機能しているようにみえるそうです。

このように古事記と日本人らしさについての興味深い考察が続いたあと
受講者からの質問と感想があがりました。
このとき発言された方は、みなさん古事記や正史ついて
かなりお詳しい様子がみてとれました。

今回は、古事記について知識の有無によって理解度に差が出たと思われます。
実際「古事記は読んだことがないので事前に予習してきました」
とおっしゃっていた受講者からは、「よく理解できなくてもやもやしていたけれど、
目から鱗の発見があった」「興味深い内容だった」という感想をいただいた一方、
「聞きなれない神々の名前や知らない用語が出てきて理解が難しかった」
というご意見もありました。講義形式含めて、今後の課題とさせていただきます。

ご参加くださったみなさま、まことにありがとうございました。
また、これを読んで「いっちょ古事記を読んでみるか」と思っていただければ幸いです。
一般向けの口語訳や解説本のほか漫画もありますので、ぜひお手にとってみてくださいね。