日本人ことはじめ講座は、日本人らしさゆえに世界を魅了する無名の日本人を増やします。

京都の染色家、吉岡幸雄氏。そのお名前は存じ上げていましたが、今年大きなお仕事をなさいました。氏は日本古来の染色方法による伝統色の再現に取り組んでいらっしゃいますが、イギリスのヴィクトリア& アルバート美術館が、彼の制作した「植物染め100色のシルク」を永久保存するのだそうです。

私はテレビ番組でこのことを知ったのですが、日本の伝統色に注目してくれたV&A美術館に拍手喝采でございます。同美術館の担当者は「自然の植物からこれほど多彩な色を再現できることに驚いた。世界のどこににもない色と技法だ」とその価値を高く評価していました。

私も自分で着物を着るようになって、古の人々が生み出した色とその色名の豊かさに目を見張った一人です。

例えば緑がかった暗い青を指す「御納戸色(おなんどいろ」。納戸の中のほの暗さを表しています。「瓶覗き色(かめのぞきいろ)」は、藍の染料が入った瓶をちょっと覗いた(浸けた)ときの淡い水色・・・なんとも詩的で遊び心のある色名だと思いませんか。

草木染が化学染料に取って代わられた今、色を抽出するための植物を入手することはきわめて困難です。吉岡氏は地方の農家と協力して、染料の元となる植物の栽培から取り組んでいらっしゃいます。

伝統のものづくりに携わる日本の職人さんの努力と熱意には、頭が下がって下がって地面につかんばかり。一つのものごとに専心し常に最高を目指す彼らの姿を見聞するたびに、自分の生き方が薄紙のようにペラッペラに感じてしまいます。生まれ変わったら宮大工になって、千年経っても残る仕事がしたいなあ・・・・。