日本人ことはじめ講座は、日本人らしさゆえに世界を魅了する無名の日本人を増やします。

6月25日(日)、日本人ことはじめ講座日本の美【生誕300(+1)年 若冲と蕪村の世界】が開催されました。

昨年、各地の展覧会で盛り上がりをみせた伊藤若沖と、俳人かつ絵師としても名高い与謝蕪村は同い年。生前両者の交流はなかったようですが、「蕪村の絵には、その味を知った人だけがわかる魅力がある。蕪村はここ大阪出身だからこそ、ぜひ知っておいてほしい」とおっしゃる村田先生。両者の作風を対比してお話ししてくださいました。

 

日本の美への水先案内人、大阪国際大学准教授 村田隆志先生。

 

はじめに、「大人になり経験値が上がると何事も目新しさがなくなり感動力が減るが、逆に共感力は高まっていく。最近の研究では、この感動力を再び高めていくことが若々しさを保つ(健康寿命を延ばす)秘訣であることがわかってきた。

感動力を伸ばすには絵画などの芸術作品に触れることが大切だが、ある程度芸術作品の見方を知っておく方が、より理解が深まり感動しやすくなる」

というお話から、美術の鑑賞法として注目を集めるVTS-Visual Thinking Strategies(対話による美術鑑賞法)-をご紹介いただきました。

実際に先生にお持ちいただいた抹茶茶碗を、一人ずつ手に取り思い思いに鑑賞。この茶碗の作者はケニア人の青年。大雨が降る前のケニアの空の色を表現したかったけれども理想には届かなかった”失敗作”だとか。皆さん、何をお感じになったでしょうか。

 

茶碗の形、色、手触りをじっくりと鑑賞。

 

VTSの視点でみれば若沖の作品には、込められた情報が多いと言えます。三十幅からなる彼の代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」のうち数点をとりあげ、その特徴を解説していただきました。

若沖は「たくさん同じものがある中で、ひとつだけ違うものを描く」傾向があり、さながら間違い探しのように一つひとつの絵を見ていきました。どれかわかりますか?

 

動植綵絵『紅葉小禽図』(一枚だけ枝から離れた紅葉あり)

 

動植綵絵『群魚図』(蛸だけ子蛸と一緒)

 

たとえば「蓮池遊魚図」には鮎の群れが描かれていますが、一匹だけ違う魚がいます。先生はそれを図鑑で調べたうえで「イワナ」だと図録に書いたところ、ある日「オイカワの間違いである」と訂正を促す連絡をある方から頂戴したそう。そのお方は・・・・なんと天皇陛下!!!

 

動植綵絵『蓮池遊魚図』(一番下の一匹だけオイカワ)

 

そうです、今上陛下は魚類学者。先生もさぞや肝を冷やされたとは思いますが、陛下が丁寧に図録にも目を通していらっしゃることがわかる貴重なエピソードだと思いました。

 

 

若沖は京都の青物問屋の大店に生まれ、絵具を買うお金も絵を描く時間もたっぷりあったのに対し、蕪村は不義密通の末にできた子として不遇の人生だったのではないか。

二人のバックグラウンドを踏まえた上でそれぞれの作品を鑑賞すると、味わいも深くなります。

蕪村は俳人として、一瞬の自然の情景を切り取り俳句に収めましたが、そのカメラのシャッターのような目が絵にも生かされています。

 

白い部分を塗り残すことで表現した粉雪が見事な「鳶・鴉図」(与謝蕪村)

「確かに『形』をとらえることに関しては若沖の方が優れているかもしれない。でも蕪村は『光』をとらえた画家としてはレンブラントに匹敵し、フランスの印象派に先駆けている。凡人が見えないものを見せてくれるのが天才とするなら蕪村はもっと評価されていいのではないか」という先生の蕪村評は強く印象に残りました。

 

点描によって光を表現した「新緑杜鵑図」 (与謝蕪村)

参加者の皆さまからいただいた感想です。

・本日は村田先生の素晴らしいお話をありがとうございました。私の心もとない審美眼もずいぶんと見開くことができたと思っております。

・今日の講演もとても楽しかったです!先生のお話がお上手なので惹きこまれました。感動力と共感力の話しからなるほどと心掴まれました。絵画のバックストーリーを聞いて、作者に人間味を感じました。すごく面白かったです!ありがとうございました。

・村田ワールドに引き付けられました。美術品に詳しい方は歴史や文学に精通しいろいろなことをご存じなので、あっという間の楽しい2時間でした。

・村田先生の講座は今後も絶対に受講したいです!講座内容もですが、先生の美術に対する姿勢も素敵ですね。今から次回の講座が楽しみです。他の人も誘います!

・今日は素晴らしい催しにお誘いいただいてありがとうございました。娘と2人でとても充実した時を過ごすことができました。ランチまでご一緒できて、お料理もおしゃべりも楽しかったです。

・先生のお話を聴いてから若沖の展覧会に行けば、もっと楽しめたと思います。先生にはランチまでお付き合いいただき「美術界の裏話」的なお話まで聞けて得した気分です!次は先生の案内でどこかの美術館を案内してもらいたいです。

 

村田先生の講座を重ねるたびに日本の美術品への興味・関心が高まり、次回を心待ちにしてくださる方が増えています。主宰者としても喜ばしい限りです。

ご参加くださった皆さま、まことにありがとうございました。